旋盤/複合加工機主軸づくりに見る、
妥協を許さぬ“つくり込み”

品質基準を1µmでも外れたら不合格

「工作機械の心臓部である主軸の製造に対するオークマのこだわりは、レベルが違うように感じます」と語るのは、入社以来、30年以上も旋盤加工に携わり、「あいちの名工」にも選ばれた勝田佳裕です。彼は配属された主軸加工係で技能を磨き、旋盤・マシニングセンタ・研削盤・複合加工機の本機主軸から門形マシニングセンタのアタッチメントや特殊工具の取付主軸まであらゆる種類の主軸加工を担当しました。
主軸の製造工程は、素材の切断→鍛造→旋削荒加工→深孔加工→焼準(焼ならし)処理→旋削仕上げ加工→マシニング加工→防炭・浸炭処理→荒研削加工→仕上げ加工の手順で進められます。その過程では、素材の材質、熱処理の仕方、ひずみ取り、最後の研削加工まで各工程の重要なポイントで厳格な品質基準・加工基準を設けて精度をチェックしています。
「品質基準は1µmでも外れたら不合格です。オークマの品質基準を守るため、最終的な仕上げ加工は必ず社内で行っています」と勝田は明かします。こうして完成した主軸と関連部品は、ユニット組立部門で精密に組み立てられ(本サイトCASE2参照)、本機に搭載されていきます。

いつまでも、
バリバリと精度よく削れる機械であるために

決して安価ではない工作機械を導入するのだから、いつまでもバリバリ削りながら加工精度を保ち、加工品質と生産性向上に貢献してほしい──これはすべてのお客様共通の願いです。
しかし、現実には「同じ機械で荒加工と仕上げ加工を併用していると、何かと不調・不具合に見舞われる」「重切削と軽切削を繰り返していると寸法のバラツキが目立ってくる」「工程集約のためハードターニング加工をしたいが主軸が耐えられないだろう」・・これらは主軸や軸受などの加工・組立精度に起因する剛性不足、機械本体の構造を要因とする剛性不足などが考えられます。
オークマは、こうした現象とは無縁の高剛性・高精度の機械をお届けすることを設計・製造の基本理念と位置付け、厳格な品質管理を徹底しています。
実際、アジア地域の販売代理店の技術サービス指導や協力会社の技術指導のため、台湾の製造子会社に駐在した勝田は、お客様から耳にした言葉が今も忘れられません。「オークマ機は10年使い込むと、高剛性・高精度の真価が見えてくる」「オークマの機械を導入して会社のステータスが上がった」「いつかはカタログの表紙を飾っている5軸加工機や複合加工機を導入したい」・・。
こうしたお客様の一言一句が、マイスターをはじめオークマの全従業員の大きな励みとなっていることは言うまでもありません。

マイスターの加工ノウハウを知能化技術に

オークマ機と言えば、高剛性・高精度とともに、ものづくり環境を革新する「知能化技術」が知られています。素直に熱変位する・ぶつからない・びびらない・最適な加工条件に自動調整…これら高精度・高生産性を支える革新的な加工インフラ技術は、オークマの加工現場で培ったマイスターたちの暗黙知(コツ、勘どころ)を数値化し、デジタル制御することで実現した成果です。
旋削のマイスターである勝田が、その一例として、長尺ワークにおけるびびり抑制について解説してくれました。「長尺物は同じ回転数で切削すると、どうしてもびびりが生じます。しかし、技能工たちはワークの材質・形状や工具を見極め、負荷の掛け方や回転数を調整するなどしてびびりの発生を抑えます。この技をNC制御に反映させて最適な加工条件を導き出すのが『加工ナビ』です」。
さらに「知能化技術の代表といえる熱変位を正確に制御する『サーモフレンドリーコンセプト』も、高精度な部品加工や組立技術があってこそ成立する機能です。環境温度や加工で生じる熱変化によって機械が “素直に変形する” から制御しやすい。だから同じような仕組みを採り入れてもオークマ機ほどの加工精度を出せないのは、機械のつくり込みが違うからです」と。

先輩から後輩へ、
受け継がれるオークマのものづくり

マイスターへの道のりは、どのようなものだったのか。勝田は「配属される先々で後に名工と呼ばれる先輩がいて、図面から最適な加工工程や手順を導く手法、豊富な知識と応用力、無駄なく正確でスピーディな仕事ぶりなど、すべてを学びました」と語ります。自身も、主軸加工だけでなく前・後工程の知識も貪欲に吸収。さらに幅広い機種に関わる中で納入機の据付業務に携わり、多能工としての力量を高めていきました。
現在はこうした経験をもとに「ものづくり加工道場」の講師として、中堅社員の実習生を対象に身につけたすべての技能を伝授しようと奮闘しています。目標は、実習生の国家技能検定100%の合格率と多能工の育成です。そのために、社内技能競技大会では若年層の加工教育にも力を注ぎ、技能の底上げを図っています。
「いつかはオークマの新鋭機を導入したい」と願うお客様の期待を上回る製品をお届けするために、道場では今日も若い実習生たちが機械とワークに向き合っています。

オークマの匠

金属工作機械工

勝田 佳裕YOSHIHIRO KATSUDA

1985年
(株)大隈鐵工所(現オークマ(株))入社
2000年~2001年
Tatung-Okuma Co. Ltd(台湾)駐在
2007年~
愛知県技能検定 検定委員
2015年
あいちの名工に選出
勝田 佳裕 YOSHIHIRO KATSUDA